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FUTURE 仕事場を訪ねて

vol.1 黒木泰等さん 高田志保さん

2016年7月3日まで、器まるかくで個展中の黒木泰等さんと高田志保さん。京都の亀岡で作陶を行う陶芸家ご夫妻です。おふたりが作陶されている亀岡の工房を訪ねました。

■二世代、三世代で器づくり

黒木泰等さんと高田志保さん。作品を見れば、仲の良いご夫婦であることがすぐに分かります。数点の作品を手に取って、それがたまたま黒木さんの飯碗と高田さんの鉢だったり。黒木さんの作品を気に入っている方に高田さんの器をお見せすると、「これもいいですねえ」とすぐに気に入ってくれたり。そういうことが、まるかくでもよくあるのです。 亀岡の陶房にうかがったのは、まだ寒さが残る季節。二児のお父さん、お母さんとなったばかりのおふたりが温かく迎えてくれました。母屋からは、元気のよい赤ちゃんの声が。こんなときに押しかけてしまって・・と恐縮する私たちに、「うちは手が多いから、仕事も子育てもしやすいんですよ」と、笑顔で語る高田さん。とても産後すぐとは思えないほどの元気さです。
黒木さんのお父様も現役の陶芸家で、今も二人で並んで轆轤を回すことも。もちろん高田さんが使うのもこの仕事場です。ときには5歳になるお嬢さんがそばで土をこねたり。近い将来、親子三代の仕事場になる可能性も大いにありそうです。 ■黒木さんの黒釉

「黒木さんといえば織部」と言われるほど、黒木泰等さんの織部シリーズファンは多いのですが、今回の個展でひときわ目を引いたのは、縁の部分にほんのりと織部を感じる黒釉の器です。 

ガラス質でたまりやすいという織部釉の特徴を活かすことで、この絶妙な表情を生み出しているとのこと。さらに、窯内の微妙な温度の違いによってマットと艶のある部分が生まれ、ドキドキしてしまうくらい色っぽく、それでいて上品な黒に仕上がっています。



■高田さんの貫入

いっぽう、高田さんの定番といえば、炭色の貫入が美しいこちらのシリーズ。焼き上がった器を窯から出し、ちょうどよい貫入が入るタイミングで、天然の墨汁をスポンジで塗って洗い流す、という手法で作り出しています。使いこなしが難しそうに見えますが、案外どんなお料理も受け止めてくれるおおらかさがあります。特にこれからの季節、お料理を涼しげに見せるのにはぴったりの器です。

■異なる個性がお互いを引き立て合う

黒木さんと高田さんの作品を同じテーブルにのせると、その存在をお互いを引き立て合うかのよう。おもしろいのは、そこにある個性の違いです。夫婦とも陶芸家、同志でありながらあるときはライバルなのかと思いきや、「不思議とそんなふうに感じたことはないですね。おそらく、性格がずいぶん違うせいではないかと思います」と黒木さんが笑います。例えば窯入れのときにも性格が現れるのだそうで、「そういえば、もう少しきちんと詰めれば?なんて言われたりしますね」(高田さん)。その性格の違いから、作るものや目指すものが違ってくるのだとか。「私の器は、男性が作っていると思われることが多いんです。どうしてでしょう(笑)」という高田さんの作品、確かにそのフォルムは繊細ながらも大胆、勢いを感じます。けれどもそこに包み込むような優しさがあるのは、ある意味、高田さんのお人柄そのものなのかもしれません。
■薄さへのこだわり

もうひとつ、お2人の作品の特徴といえば、その「薄さ」です。例えば酒器。唇に当たるグラスのような薄さが、きりりとした辛口のお酒によく合います。不動の人気を誇る黒木さんの飴釉シリーズも、洗うときに少し気を遣いますが、その魅力にとらわれると何枚も欲しくなってしまう逸品なのです。その魅力は、やはりそのフォルムがもつ繊細さではないかと思います。
薄さにこだわる理由は?と黒木さんにお聞きしたところ、「うーん、そうですねえ。僕は高校、短大と彫刻の勉強をしていたんですが、今思うと、そのころから繊細なものに惹かれていましたね。原点はジャコメッティの彫刻かもしれません。根底にある好みの本質が華奢あるいは繊細で、今もその衝動で制作しているような気がします。原口卓士氏に弟子入りしたのも、やはりその繊細な作風に惹かれたから」とのこと。高田さんが師事した冨部伸造氏も、やはり繊細な薄づくりの器で知られる作家さん。そんなお話をうかがっていると、黒木さんと高田さんがお互いに惹かれるようになったのも、ごくごく自然なことだったのだろうなあ、などと思ってしまいました。

薄手の器は確かに少し気を遣いますが、「たいせつにしよう」という気持ちが芽生えてかえって割りにくい、というのは、あるお客様の言葉。確かに、割れない陶器はないのですから、その愛情こそがお皿を割らない秘訣かもしれません。おふたりの作品は、きっとさまざまなお宅の食器棚の中で、特別な存在になっていることでしょう。

■手入れは簡単。気楽に使って欲しい

今回の在廊時、気になる器の取り扱いについて詳しくお聞きしました。「例えば目止め。必ず米のとぎ汁で煮てからでないと使ってはいけない、と思っている方もいるようですが、そんなことはないんですよ。中には目止めをしないほうがよい器もあります。例えば、僕の白釉や粉引には、水分が入り込みにくくなるコーティング加工をしているので、目止めは不要です。基本的には、陶器は時間とともに風合いが変わっていくのを楽しむもの。もちろん、食べ物を入れたままラップを掛けて冷蔵庫に、といったことは避けたほうがよいのですが、食べる前にさっと水にくぐらせる程度で十分ではないかと僕は思っています」。また、金属的な輝きを持つ高田さんの鉄釉や黒木さんの黒釉は「電子レンジに入れるのはまずいですよね?」と聞かれたりするのですが、「まったく問題ありません。私たちも使っていますよ」とのこと。特に取り扱いが難しいわけではないので、もっと気楽に、毎日使って欲しい、というのが黒木さん、高田さんの願いだそうです。ひとつだけ気をつけて欲しいのは、使ったあとに完全に乾かしてから戸棚にしまうことだそうです。


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