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FUTURE 仕事場を訪ねて

vol.2 松浦コータローさん

昨年11月の作品展が大好評だった松浦コータローさん。得意の絵付けはもちろんのこと、青磁や粉青、安南など、李氏朝鮮や東南アジアの古陶に影響を受けた作品にも力が入り、制作意欲がますます高まっている松浦さんの工房を訪ねました。

■手びねり時代の魅力

松浦コータローさんとまるかくのお付き合いは、かれこれ6〜7年になります。京焼の絵付け師からキャリアをスタートさせた松浦さん、最初にまるかくのために作ってくれたのは、手びねりに上絵付けの作品でした。その色絵がなんともやさしく温かく、そして程よくやんちゃでキュート。スタッフ一同すっかり魅せられてしまい、以来ほぼ毎年まるかくで作品展を行っています。

こちらが初期の作品。緻密な筆遣いはすでに満開ですが、その巧みさと手びねりならでの凹凸感とが相まって、なんともほっこりした印象。すべての工程で手のかかる仕事だけに、一度品切れとなると、数ヶ月(ときには年単位で)お客様を待たせてしまうこともあるのですが、「どうしても欲しいから気長に待ちます」と言ってくださる方がこのころから多かったのは、それだけ魅力的な作品作りをしてきた証といえるでしょう。

■「器のかたち」へのこだわり

オンラインショップ向けの作品の相談を兼ねて工房を訪ねたのは、仕事場を京都から滋賀に移したばかりの昨冬。琵琶湖を眺望できる高台のかわいらしい一軒家が、松浦さんの現在の仕事場です。同じく陶芸家の奥様、松浦なおこさんとともに、日々作陶に励んでいます。

初期の作品は手びねり中心でしたが、最近はろくろ引き、そして型打ちの作品にも取り組んでいる松浦さん。「絵付け師という職業から入ったため、最初は器のかたちというものにあまりこだわりがなかったんです。絵柄のほうばかりに興味が向いてしまっていて。それがいつの間にか、かたちの魅力、土の魅力にとりつかれ、今は型打ちの型を作ることに夢中になっています」。

型打ちの器の制作は、このような型を作るところから始まります。石膏で作られることも多い型ですが、松浦さんの場合は陶土をこねて素焼きしたものを使っています。この型に素地をかぶせ、ていねいに型をとっていきます。松浦さんにとって、ろくろよりずっと手間のかかる成型方法だそうです。

上記の型から生み出された作品がこちら。手前左は、11月の作品展で人気を博した粉青シリーズの小皿です。型作りをしてから、掻き落としと呼ばれる手法で彫りを入れて白化粧を施し、そのあとに青の釉薬をかけて焼くという手の込んだ作品となっています。右の灰青磁と、奥に見えている安南手は同じ型を使っていますが、一方は線刻、もう一方は絵付けが施されていて、まったく印象の違う作品となっています。


■尽きない好奇心と冒険心

「松浦さんの初期の作品を知っている方は、なんともユーモアにあふれた、エロス感たっぷりの作品があったこともご存知でしょう。そんな作品が最近見られなくなったのがちょっと残念・・という声もありますが、松浦さんの好奇心と冒険心は一度たりともその場には留まらないようです。器のかたちへのこだわりはもちろん、得意の絵付けに関しても、個展のたびごとに新鮮な、そしていかにもコータローさんらしい作品がお目見えします。

こちらは、更紗文の酒盃。2015年に登場した作品です。更紗とはインド発祥の染織物のことで、南蛮貿易を通じてやってきた布は、その後の日本の文化に大きな影響を与えています。その豊かな色彩と独創的な絵柄に魅了された松浦さん、あちこちで資料を買い集め、その図柄を夢中で写し取っていた時期があったそうです。

絵付けの発想は、古いものに影響を受けることも多いようですが、「動物のさりげない動きとか、植物の佇まいとか、じっくり観察するのが好きなんですよね。そこにある存在感や美しさを自分なりに解釈して、絵になっていくのだと思います」とも。松浦さんの絵付けに多い草木、そしていたずらな目をした猿やひなたぼっこをする猫、にぎやかな声が聞こえてきそうな鶏・・そんな作品が生み出される背景には、やはり松浦さんのキラキラな好奇心と観察力があったのだなあと思わず納得してしまいました。

現在オンラインショップで扱っている色絵小皿。オリジナルはずいぶん前の作品展でお目見えしたもの。懐かしさを感じる色合いと使いやすさが好評、「用がなくてもテーブルに出したくなる」というお客様の声も。

こちらは本邦初公開、松浦さんのアイデア帖。色絵小皿の下書きが描かれています。他のページには未発表のデザインもあったりして、ちょっとドキドキ。

松浦さんの色絵作品は、本焼をする前の下絵付(染付や鉄絵)と、一度焼いてからの上絵付け、2回の工程があります。作品は異なりますが、こちらが下絵付けをしている様子です。

付と呼ばれる工程。古陶の手法に倣い、発酵させたお茶で釉薬を溶いて粘り気を出したり、あるいはゼラチンや天草などを使うといった工夫も。絵具の質感の違いによって、奥行きのある多彩な絵付けが生まれるのだそうです。



■さらに工夫を重ねて

「新たな作風を生み出すための実験が楽しくてたまらない」という松浦さん。鼠志野シリーズも青磁も、何年もテストを繰り返し、満足の行く結果が出たところで世に出されたもの。工房にうかがったときには、ちょうど青磁のテストピースがたくさんころがっていました。こんな渋い風合いの器も作っているのだなあ、とびっくりしたのですが、仕上がってきたのは松浦さんらしいキュートな作品でした。

灰青磁白花線刻文というシリーズ名が付いた木瓜皿。どんなお料理もやさしく受け止めてくれます。

こちらは鼠志野シリーズ。これがまた渋いのにどこかかわいらしく、「どんな方が作っているのですか?」と店頭で尋ねられることが多い、たいへん印象的なシリーズです。

鹿文に菖蒲文、染付は古陶がお手本、でもやっぱりコータローワールド。

作品の幅は広がる一方の松浦さん。これから先も何が飛び出てくるか、楽しみでなりません。年を重ねてもなおキラキラと目を輝かせ、追究心と遊び心を忘れない器を作り続けてくれることでしょう。
 

松浦コータロー
1981年大阪府生まれ。2004年奈良大学文学部文化財学科卒業。2006年、京都府立陶工高等技術専門校陶磁器図案科修了後、京焼窯元に絵付師として勤務。2009年京都山科の貸工房にて、作品制作を始める。2015年より滋賀県大津市にて作陶中。

 

※作品展の様子は、ブログでも紹介しています。

※松浦コータローさん作品の入荷状況は、InstagramFacebookで随時お知らせします。


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